この日は眠れなかった。
昼間はカンカン照りのいいお天気で、子どもたちは河原で、バシャバシャと靴のまま水遊びしたと言うのに。
夜、急に強い雨が降って、風はゴウゴウと不気味な音を立てていた。
左うでには4才の次男。右うでには7才の長男。
頭の上には5才のめすネコ。お腹には11才のオス猫。足元には11才のメス猫。
眠れないし、起きようかなとも思ったけど、完全にロックされていた。諦めた。
夕方、子供たちの前で泣いてしまった。別居してから一度も泣かなかったのに。
何かが押さえきれず、子どもの前で、ワンワンと泣いてしまった。
7才の兄は不安そうな顔をして、机の上に寝そべった。「はにゃ?」とか言って、よそ行きの声を出して、おかしな様子の母を離れて見ていた。
4才の弟は、「おかあ、どうして泣いてるの?」とそばにきて、頭を撫で、「どうしてなの?話してごらん?」と言った。
その時のこと、今まだうまく書けないけど、子どもたちにも《大事な話》として話をした。
一生忘れない。
深夜の激しい雨。眠れず、心の状態を観察し続けた。
孤独、不安、落胆、苛立ち、消沈、疲弊、悲しさ、焦燥、痛み
文字通り、胸のおくがズウンと鈍くチクチク、ジクジクしていて、
ここに深い切り傷みたいな傷があるなと、ハッキリと分かった。
酸素が足りず、詰まったような息苦しい感じがて、だけど、どこかに小さな安堵感もあった。
これ以上、関係を続けていても、ずっと苦しいだけだったと思う。
このタイミングで離婚できることはきっと、後から振り返った時、よかったって思えるだろう。
明日は、こんな雨の中、離婚届を出しに行くのかと思うと、うんざりしたけど、
この雨と風の勢いで、いろいろを洗い流してくれと思った。
一睡もできず、5つの命にロックされたまま、(守られたまま?)朝を迎える。
まだ眠い子どもたちと、ようやく眠気がきたのに起きなきゃいけない母で、
いつものように3人ゴロゴロ布団で朝のやりとり。
兄弟ケンカがあって、甘えたい甘えたいと母の取り合いがあって、
「今日ほいくえん?」といつものように弟が聞いてくる。
「今日はほいくえん。 今日の夜ねて起きたら、そつえん式やな」と答えた。
ロフトから降り、朝ごはんを食べる頃、
ウソのように雲が動き、太陽が出てきた。
カラッと晴れた。
床には朝ごはんのパンの食べカス。ソファには全部たたみきれなかった洗濯物。
昨日弟が作った牛乳パックとストローの楽器。そうそう、昨日、3人で音楽会をしたんやった。
兄は春休みの宿題の「こくご」はもう終わったから「おかあ問題出してー」と鉛筆を持ってきた。
弟の連絡帳を書きながら、兄の問題を頭の中で考える。
婆さんネコが水を出してと洗面所にのぼり、爺さんネコは美味しいご飯を催促する。
チビネコはまだ寝てる。
あっと言う間に出発の時間。「行くで!」といつもの私。
カバンの中に離婚届を入れ、いつものように子どもたちと家をでた。
今日、離婚届を出すんだ。
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